ルリユールおじさん
作 いせ ひでこ
理論社
1600円+税
ISBN 4652040504
この本は絵本でもあるし、画集でもあるし、ルリユールの解説書でもある。
絵本としてしっかりとしたストーリーを持って、子どもだけでなく私のような大人をも次はどうなるのだろうという気持ちを持たせ、少女とともにパリを駆け回らせてくれる。この少女は作者の分身か作者自身ではないかと思う。子どもの無邪気さともう一人の主人公であるおじさんの優しさが、この少女の目線でしっかりと絵と文章に、それも短い言葉であらわされ、このままで映画にもなりそうです。
この本に出会うまで、この口になじみにくいフランス語「ルリユール」というものを知らなかった。初めて手に取って読んだときも口になじまなかったこの言葉をこの本の巻末の解説を道しるべに調べてみた。理由はよくわからないが、フランスでは印刷業と製本業が兼業出来ない仕組みになっていたらしい。「ルリユール」とは印刷された紙の束としての本に装丁を施す仕事で、その作業内容はこの絵本の中に細かに描かれている。中学生の頃、学校の図書館の司書の方が痛んだ本をばらして製本しなおす作業を図書委員であった私が不思議なものを見る思いで眺めていたことを思い出す。
子どもたちに本を大切にする心も教えてくれるのではないかと思う。新しく生まれ変わった本を手にした少女の喜びが気持ちよく感じられる本です。
1 件のコメント:
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安野光雅の絵を思い出しました。
この本を持ってパリに行ってみたくなりました。
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