日本の古典をよむ 1
山口佳紀・神野志隆光 校訂・訳
小学館
1890円
ISBN 978-4-09-362171-7
当店のすぐ近くにある賣太神社は古事記伝承者の稗田阿礼で知られている。古事記、また同時期に書かれたとされる日本書紀の時代、いわゆる記紀の時代にわが国はまだ書き言葉を持っていなかったといわれる。ひらがなカタカナが確定するのは平安時代を待つことになるのだが、この時代にはどうしていたのであろうか。文化の源は中国で、漢字で書き記された漢文が国際用語であり、当時の記録の公式な用語であったとされている。その中で古事記は漢字を当時の日本語の音にはめて漢字で書き表されている。一方日本書紀は漢文で書かれている。
日本書紀が正史とされてメインとなっていたが本居宣長が古事記に読み仮名をつけて注釈をつけた大書「古事記伝」を著すにいたって注目されるようになったという。このあたりは本書のあとがきを参照されたい。
まだ大和言葉を書き表す独自の文字を持つ前に数十年にわたって伝承された歴史が検証され書きあらわされた時代、古典のシリーズで筆頭に上げられるこの古事記を現代語訳と原文を織り交ぜてとても読みやすくなっている本書を通してそうした日本の古代にしばし遊ばれてはいかがでしょうか。田辺聖子さんは「古典は、われわれの先祖が残してくれた人間味のある文学。何百年も読み継がれてきた魅力に触れてほしい。」 と、書いておられます。